ファントム PHANTOM OF INFERNO

  前半は「ネタばれ」はほとんどありません。後半、断ってからは「ネタばれ」のオンパレードになっています。

 

メーカー 発売日 プレイ時間 やってみて度

ニトロプラス

2000年2月 コンプリートまで14時間 S

 

 「な、何なんだこのゲームは....」と、プレイ中にそのゲームのキャッチコピーを確認したくなったのはこれが初めてです。

 「美少女ゲーム史上初の本格ハードボイルド純愛物語!!」(パッケージ裏より)

 ハードボイルドで純愛? このコピーだけ見ると胡散臭さ爆発な感じもしますが、ああなるほどと納得してしまいました。とにかくハードです。もうハードボイル度■■■■■■■■■□(星空☆ぷらねっとから借用)。

 私が好む学園ラブコメものとは全く違う雰囲気のゲームでしたが、ゴールデンウィークの丸一日を潰してまで(というか止められなかったんですが...)やった甲斐のあるゲームでした。

< ハードなシナリオと魅力的なキャラクター >

 殺人現場を目撃してしまい殺されかけたのをきっかけに、犯罪組織インフェルノに殺しの才能を見出され、暗殺者としての人生を歩まざるを得なくなった主人公の苦悩を描くハードボイルドストーリー、とういのがあらすじでしょうか。
 これに5人の魅力的なヒロインがかかわってきます。若きNo.1暗殺者・アイン、組織の上司・クロウディア、元気なみなしご・キャル、ごく普通の日本人高校生・美緒、主人公をライバル視するヒットマン・ドライです。

 私はハードボイルドの定義は良く分からないのですが、雰囲気としては、ジャン・レノ主演の映画「レオン」に近い感じがします。この映画も殺し屋が主人公で、身寄りのない少女との交流を描いたハードボイルドものです。「レオン」の方が、よりシビアな展開を見せますけどね。

 主人公は苦悩する殺し屋であり、敵も味方も常に死と隣り合わせです。そのため、敵に殺されたり、味方に裏切られたり裏切ったり、っという不幸な展開ばかり予感させられ、全編を通して緊張感、閉塞感みなぎるストーリーになっています。ですがそんな中でも、ちょっとした幸せを感じさせるシーンが所々に挿入されていて、ホッと息をつかせてくれます。

 そして5人のヒロインそれぞれも哀しい宿命を背負っており、主人公とともにストーリーを盛り上げます。ちょっと都合の良すぎる設定もあったりしますが、5人ともに魅力的なシナリオが用意されています。美緒なんて日本で普通の高校生をやっているのに、どうやってハードボイルドに絡ませていくのかと思いましたが、すんなり違和感なく物語に入り込むことができました。良く練られているなあと、十分に感じさせてくれるシナリオでした。

< 独特な塗りのCG、銃器や車はリアルな3D >

 絵で特筆すべきは、銃器や車が全てリアルな3D表現になっていることです。ちょっとやりすぎなんじゃない、と思うかもしれないですが、この銃器のリアルさが、ハードボイル度をより高めていると感じました。私は子供のころミリタリーファンだったので、こういうリアルさは大歓迎です。

 そしてイベントCGの人物も、リアルな銃器といっしょでも違和感がないようにという配慮のためか、独特な塗りで描写されています。私は上手くマッチしてると思いましたし、どれも丁寧に描かれていて好感が持てました。

 また立ち絵の方も、バリエーションが豊富に用意されていて良かったです。ですが、キャラの頭身が大きいため顔が小さくなり、表情がわかりづらいものがあったのは残念でした。

 < さりげなく雰囲気を演出する音楽 >

 BGMは曲数が少なめで、強く自己主張してこない曲が多いです。ですが、場面場面の雰囲気にピッタリの曲が流れ、シナリオを盛り上げてくれます。感動的なシーンにかかる曲も良いのですが、息抜きのシーンでかかる曲もまた良いのです。

  数が少ない、と感じさせられた以外に全く不満はなかったです。

< こだわりのインターフェイスを持つシステム >

 システムでは、銃を前面に押し出した独特のインターフェイスが目を引きました。 
 ゲーム中のメニューの選択は、人型のターゲットが現れ、目的のメニューが表示されている部位をクリックで「撃つ」という凝った仕掛けになっています。また、データセーブ画面では、セーブ時に使用していた銃がアイコン表示されます。システムまでハードボイルドしてました。

  ただ、そのために使いづらいと感じることもありましたし、ちょっと反応がトロいなと思うこともありました。あと、おまけのCG閲覧機能で、表示を切り替えるたびにいちいちサムネイルを作り直すのだけは勘弁してほしいです。

< やってみてほしい異色作 >

 まさに「異色の18禁ゲーム」と呼んで差し支えないのではないでしょうか。主人公が殺し屋というハードボイルドストーリーであるため、当然、露骨に「萌え」を狙ったキャラはいませんし(早苗は微妙か?)、過度なパンチラやミニスカートなども無し、コメディタッチの会話もほとんどありません。
 普通の18禁ゲームとあまりにもかけ離れた雰囲気で、Hシーンも薄めですが、そのシビアなストーリーに多くの人が惹きつけられるのではと思います。

 ただ、ここまでハードなシナリオだと、どこまでハードさを貫くかというのも問題になりそうです。これはシナリオライターの方もあとがきで書かれていたのですが、例えば、よりシビアなストーリーを見せる映画「レオン」と比べてしまえば、ご都合主義的設定や展開が目立ってしまいます。
 私的には、シナリオによってはラストがハッピーすぎるな、と感じることもありましたが、美少女ゲームの範疇に入るゲームとしては、このぐらいでちょうど良かったのではと思います。

 

  

 

 

 

 

 

 

 以降はネタばれ「あり」、というかプレイ済みの人にしか分からないような感想になります。そういうのはちょっと.....という方は、感想Topページへ戻ってください。

 

 

 

 

 4人のヒロインそれぞれの感想を、攻略順に書いていきます。

< 1人目:クロウディア >

 私の嗜好からすれば、当然真っ先に狙うのがクロウディアです。年上であるだけでなく、なんと組織の上司!さらにインテリで、あくどい事も平気でするくせに可愛いところもある、というのは反則です。異常なまでのナイスボディと相まって、メロメロにならざるを得ませんでした。
  ヒロインの中でも最もハードなエンディングが待っていましたが、ある意味このゲームに最もふさわしいエンディングだったのではと感じました。だけど、主人公が撃たれる方のエンドでは、彼女に弱音をストレートに吐いてほしくはなかったですね。顔で笑って心で泣いて、ではないですが、最後まで強がりを見せ続け、主人公もそれをわかってやりながら逝く、という展開の方が彼女らしかったのではないでしょうか。さらにいえば、情事のまっ最中に乱入するというのもいただけないと思いましたが。

  余談になりますが、クロウディアのシナリオのみ「ツァーレンシュヴェスタン」の女の子達の素顔を見ることができます。クロウディアを真っ先に攻略して彼女らの素顔を最初に見ておくと、他のヒロインのシナリオのハードボイル度がさらに高まりますので、お勧めです。

< 2人目:美緒 >

 美緒とその友人達が出てくる第3章は、割と気に入っています。ハードボイルドなシナリオに、うまく私たちに親しみのある日常を組み入れてくれたなと思いました。美緒の心情の変化や比較的ハッピーなエンディングなど、ちょっと都合が良すぎるなと感じるところもありましたが、アインもドライも死なないし、これはこれでOKだと思います。
 このシナリオで外せないのは、「爆竹娘」早苗ですね。学園ラブコメが好きな私にとっては、こういうシリアスなゲームの中では貴重で、たまらないキャラでした。美緒の告白を受け入れない場合は、早苗とちょっと気になる関係になる、っという展開にしてほしかったぐらいです。彼女の存在があってこそ、主人公が最後の別れ際に言う「ありがとう」というセリフの重みがグッと増したと思います。

 またこのシナリオでは、志賀が男を上げてます。ただ最後は、主人公に対する誤解を解かせて、安らかに逝かせてやってほしかったですね。

< 3人目:アイン >

 ラスト近く、サイスと対峙するアインの表情とセリフは最高に良かったです。どのみち一生組織から追われ、平穏な生活など望むべくもない彼女ですが、サイスの呪縛から自らを解き放つあのシーンで、救われたのではないかと思います。それでも自らの拠りどころとしてのルーツが必要なのかな?少なくとも、クロウディアやドライのシナリオでは哀しい最後を迎えてしまう彼女には、ラストの笑顔のCGは不可欠ですね。

 それにしても、彼女の演技力はアカデミー賞ものです。主人公だけはうすら寒い思いを抱きながらみていたんでしょう。絞め落とされると恐怖しても止むを得ません。

< 4人目:ドライ(キャル) >

 このエンドが私は一番好きです。クロウディアのソレはハードすぎるし、逆に美緒やアインはハッピーに過ぎる。ドライはその中間というか、いずれ破局が訪れるとわかっていながら、今という瞬間を二人で刹那的に生きるという、楽しくも儚いエンドになっていたと思います。
 あの可憐でかわいらしかったキャルから、あまりにも不幸な成長を遂げてしまったドライは、アイン以上に笑顔をとり戻してほしいヒロインでした。

 しかし、欧米人の発育の良さには目を見張るものがありますね。モンゴロイドのアインや美緒ではとても太刀打ちできません。
 あと、化学室爆破シーンの豪快な使い回しには、唖然としました。

 

 

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