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惹きこまれるスリリングな展開:ラブコメとしても及第点

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左から明日奈・マナ・京香の3ヒロイン揃い踏み。最もまとまりが良いのは京香シナリオ、燃えるのは明日奈シナリオだが、不覚にも泣けたのはマナEND。なおここには出てないが、後藤教授は本年の助演男優賞候補筆頭。

活火山を有する離島で行われる、毎年恒例の研究室の実習に参加することになった大学 3 年生の主人公:久遠 漣が、気になるヒロインとの恋愛を進展させつつ、摩訶不思議な現象にヒロインともども立ち向かってゆく、というストーリーのミステリアス恋愛ADV。
 攻略対象ヒロインは、初対面のはずなのに何故か主人公を意識するボケ役の交流生:マナ、素直になれない系幼なじみ:明日奈、知的だが容赦なく奥義を連発する厳しい先輩:京香の 3 人で、ヒロイン毎にエンディングは用意されていますが、基本的には一本道のシナリオです。

シナリオは良かったですね。私は十分楽しませてもらいました。

特筆すべきは、メインとなるシリアスなストーリーが、エロゲとしてはかなりしっかりしていること。「大学の地球物理学研究室」「火山島の計測値の異常」「14年前から届いたFAX」等のキーワードからこちらが期待する、エロゲでは珍しい理系的でスリリングな展開を、多少の不整合はありますがキッチリ見せてくれます。ちょっとトンデモな設定も混ざってたりしますが、ヒロインによっては目頭が熱くなるラストまで、グイグイと引っ張ってくれました。
 一方でコメディもなかなか。前半は基本的にラブコメなのですが、序盤に強烈なお笑いシーンを一発かましてくれるため「つかみはオッケー」状態となり、以降も爆笑の連続、ということは無いですが、時々吹き出しそうになりながらプレイしてました。
 そして恋愛もそれなりに。私が一番期待した幼なじみの明日奈の展開には不満があり、全体的に唐突感も否めませんが、シリアスなストーリーに上手く組み込んでおり、十分及第点だと思います。

駄目なところは、終盤が説明不足なことと、あるヒロイン攻略時に別のヒロインがヤキモチをほとんど焼いてくれないことですね。前者については、主人公達がおかれている状態がどのようなものかの説明が足りないため、「お前らこの状況でなにを悠長に話してんだよ!」っとツッコミを入れたくなるなど、緊迫感が削がれます。初回プレイより 2 人目以降攻略時の方が状況がわかっている分楽しめる、というのは問題でしょう。また「親子の絆」とか「将来の夢」など、良く言えば意欲的に、悪く言えば無節操に複数のテーマを詰め込み過ぎているのも、説明不足と感じる一因となっています。
 後者の方はエロゲでは普通に良くある事ですが、なまじキャラ設定がリアル路線なだけに気になってしまいます。具体的には素直になれない幼なじみ:明日奈なワケですが、彼女にはぜひ他のヒロインの恋路を表向き応援しながらさりげなく邪魔するとか、陰でこっちが見てられないような切ない心情を吐露する、とかしてほしかったですね。

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かなり濃い目の純愛H:CGの塗りが弱い

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幼なじみ:明日奈との船上Hシーン。右下のサムネイルをクリックして拡大個所を移動させる操作が、ことのほかエロい。

イベントCGは差分を除くと83枚。うちHCGは30枚程度です。
 CGの質は微妙ですね。特に塗りが甘いCGが目立つのがいただけません。原画は表情の描き分けがシッカリしていて私好みなのですが、目の大きさが安定していないところがマイナス。小さいなら小さいで統一してくれれば良いのですが、たまに出てくる大きな瞳の絵がかわいいので(パケ絵含む)、小さいCGが見劣りしてしまうんですよね。原画は複数担当でしたっけ?
 ただし、立ち絵に対するこだわりは見事です。質が比較的高く、量も豊富。イベント絵も含め目パチ、口パクすべてありということで、通常シーンの臨場感づくりに一役買っています。

Hシーンは各ヒロイン 2 回。本編で 1 回、後日談で 1 回となっています。
 すべて和姦ですが、純愛系としてはトップクラスの濃さに驚きました。尺が長いのはもちろんのこと、CGの拡大個所をサムネイルから自由に選べる、というシステムがかなりエロいです。アダルトビデオを見ているような感覚にも似ていますね。前半でヒロインに萌えられた人には、思わぬボーナスとなるでしょう。

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クラシック調のBGM:ボイスは素人っぽいが

音楽鑑賞モードに登録されるBGMは29曲、うちボーカル曲は1曲。未使用曲 3 曲はボーナストラックのつもりでしょうか。
 BGMはがんばっていると思います。LiarSoftや直前にプレイしていたCLANNAD等の最強クラスの作品と比較すれば、どうしてもチープな音に感じてしまいますが、メロディ自体はしっかりしており、使うポイントも概ね問題なく、場面場面の雰囲気を盛り上げてくれます。クラシック調の曲が多用されるのが特徴でしょうか。イントロがKeyのkanonに似てる曲がかかった時はギョッとしましたが、ご愛嬌ということで。

ボイスは主人公も含め、全キャラフルボイス。一部のキャラを除き、かなり素人くささが漂います。ただ私としては、この手のストーリー重視の作品では素人っぽい方が逆に親近感があって良い、と思ったりもするので、ほとんど気になりませんでした。Hシーンも頑張ってくれてますし。ただし子供時代の演技は要改善。あれなら本物の子供にしゃべらせた方がまだマシなのではないでしょうか。

ちなみに、効果音はそれなりに用意されていますが、ズバリ足りません。さらなる臨場感を出すために、ここはこだわって欲しかったですね。

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臨場感あふれるシステム:既読スキップ無しはツライ

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右側に立つ親友:健をジロリと睨み、ツッコミようがないというキツいツッコミを入れる京香先輩。見た目にたいしたことはないが、実際にプレイすると臨場感は抜群。

システムは目立ったバグはありませんが、推奨環境がPentiumの1GHz以上ですので、低スペックマシンでは厳しいかもしれません。私は2.8Cなので軽快動作してくれました。

特徴的なのは、なんといっても通常シーンの画面演出でしょう。エロゲで複数キャラが登場するシーンは、登場キャラ分の立ち絵を無造作に表示するのが普通ですが、このゲームではすべてのシーンでキャラの立ち位置が決められており、それにあわせて立ち絵が拡大・縮小されるなどして配置されます。目パチ口パクが標準装備なのとあわせ、ほぼ全編アニメを見ているかのような臨場感があります。この演出のせいで推奨スペックが上がってしまったのでしょうが、プレイヤーの感情移入を促す秀逸なシステムだと思います。

ただし、ADVとしての機能は並以下、というよりほとんど地雷です。メッセージの読み返し機能が無いのは個人的には許せます。細かい設定ができないのもまあいいですし、100歩譲って右クリックキャンセルがほとんど効かないことにも目をつぶりましょう。だがしかし、いまどき既読メッセージスキップを付けないとは、どの面下げて販売してるんだと言いたくなります。共通パートが 5 割を超えるゲームでスキップを搭載しないその感覚は、全く理解できません。Ctrlキー押下の強制スキップが可能なのが救いではありますが、自分達のこだわりを優先させるためにプレイヤーに不便を強いる、などという行為はある程度実績を作ってからにした方がよいでしょう。

(発売 1 週間後の修正ファイルにより、読み返し・既読スキップ等が追加されています。幸運にもこれからプレイしようという方は、あまり憤りを感ずること無くプレイすることができるでしょう)

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とりあえず体験版を:次作は完成度を上げて

とにかく、体験版をプレイしてみて欲しいですね。そして少しでも惹かれるところがあれば、思い切って突撃してみることをオススメします。使いづらいシステムを除けば、お笑いやちょっと泣けるシリアスなストーリー、さらに充実したエロシーンと、新規メーカーの処女作としては驚くほど中身の詰まった本作を楽しめるのではと思います。登場ヒロインすべてに年齢が公式に設定されている、という時点でかなり人を選ぶとは思いますけどね。ロリキャラが苦手な私には望むところでしたけど。

個人的には、古い話になりますが、生化学という理系ネタを真面目に扱った小説「パラサイト・イヴ」をホウツフとさせるデキでした。ただ全体的には、小説を原作としたB級日本映画のようなイメージです。大筋において本格的で良いのですが、短い時間内に収めるためにムリヤリ必要なエピソードをカットしているかのような。効果音やシステム面も含め、発売日を多少延ばしてでももう少し完成度を上げて欲しかったですね。

ちなみに攻略順は、京香→明日奈→マナがオススメ。特に、マナの前に京香はプレイしておいた方が良いと思いますよ。

ネタばれなしです。

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