Liar Softの腐り姫と言う作品の画像を掲載しています。このサイト以外での使用、転載を堅く禁止します。


< 日本の原風景を舞台としたホラーアドベンチャー >

 実父と実妹が同時に亡くなるというショッキングな事件をキッカケに、記憶喪失となった主人公:簸川 五樹(ひのかわ いつき)が、記憶を取り戻すために訪れた故郷「とうかんもり」。そこで実妹にうりふたつの人外の少女「蔵女」に出会い、同じ 4 日間を繰り返しながら他の登場人物たちを巻き込みつつ、失った記憶と真実を取り戻していく、というのがストーリーの概要です。
 メインとなるシナリオに全ての登場人物が絡んでくるタイプのゲームで、登場女性ごとにエンディングが用意されているというシステムではありません。
 
 メーカーHPにも謳われているように、かなりホラーなストーリーです。といっても、昔なつかし13日の金曜日やゾンビなどのような、わかり易いスプラッタな恐怖ではありません。主人公とともにメインを張る蔵女の能力が、「登場人物の心の隙に取り入り、甘美な肉欲と狂気を与え、身も心も崩壊させていく」というものであり、みな何がしかの後ろめたい過去を持つ登場人物たちが、いつどのような精神攻撃を受け蔵女の毒牙にかかってしまうのか(あるいは逃れるのか)、とハラハラドキドキさせるホラーです。登場人物がみな魅力的なことも手伝って、全編通して目の離せない展開となります。

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JRとうかんもり駅の夕暮れ。ここまでやるかのクオリティ。

 さらに、異常に高いクオリティのBGMとCG(曲調や原画の好みは別問題)により描き出される舞台「とうかんもり」は、日本の原風景を残すノスタルジックさを持ち、ゲームの世界に没入することをプレーヤーに促します。結果として、一度はじめるとなかなか止まらない、引き込まれるシナリオとなっています。

 ただ、ラスト付近の物語の根幹をなす設定については、私の性に合いませんでした。それまでの雰囲気を踏襲した斬新な展開を期待していたのですが....。製作責任者の好みがモロに出た設定だったのではないか、と思います。また、全ての謎が誰にでもわかるようスッキリと明かされる、というラストではないので、フラストレーションが溜まる可能性もあり。

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< 背徳的かつ魅力的な女性キャラ:Hシーンも濃い >

 登場する女性キャラは、蔵女を除くと全部で 5 名。主人公との関係は、義母、義妹、従姉弟ときてトドメに実妹と、大学の同期生以外はインモラル度バリバリな女性達です。だけど実妹は死んでるし、他のキャラは結婚しようと思えばできる人達ばかりなので、そんなに背徳的じゃなかった、と感じた私は既に普通人の感覚を失ってしまったようです。

 そんな彼女達を、丁寧なシナリオと表情豊かなCGが魅力的に演出します。時に女性達の独白調になる回想シーンを効果的に使用して、その内面を掘り下げて示してくれるので、私などはコロッと感情移入してしまいます。あくまで私好みのという注釈が付きますが、ここまで女性キャラを魅力的に演出してくれたのは見事というしかありません。メーカーHPのキャラ紹介ではその魅力の半分も伝わってきませんので、実際にプレイして確認してみてください。
 Hシーンの描写もシナリオ重視系ゲームとしては濃い目で、女性達に十分惚れさせてからHに突入するため、インモラル度の高さも手伝って私には実用的なものになっていました。

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私のイチオシ:義妹の潤。最初はこんな表情ばっかりですが。


 私のイチオシキャラは義妹:潤です。当初最も期待していなかったキャラでしたが、彼女の激白シーンやその後の展開におけるCGですっかりやられました。こういう人、他にも多いと思います。

 そして主人公ですが、今回もブルマー2000以降LiarSoftの定番となった、超個性的な人物となっています。一見ノーマルですが、主人公の名前を自分のものに変更することが大好きな私でも、とてもじゃないですがその気になれない個性を放ちます。感情移入はできますけどね。

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< ハイクオリティで迫るCG >

 メーカーのこだわりを感じさせる、ハイクオリティなCGが用意されています。ゲーム内の時間帯により変化する背景CGは、ユーザーがゲームの世界に入り込むのを助けます。キャラ原画も表情豊かで(多少オーバーアクション気味ですが)安定しており、塗りも非常に丁寧。CGの質について文句をつける人はいないのではないかと思います。開始当初、きりこのおでこの広さには圧倒されましたけど。また、主人公を含む男性キャラもきっちり描いてくれています。

 イベントCGの枚数は、思い起こせば少なかったような気もしますが、通常シーンで各キャラの位置が分かるシステムになっているせいか、足りないと思うことはなかったです。

 原画担当は中村哲也氏。この人はLiarSoftの処女作「ちょーイタ」の原画も担当されていたのですが、メーカーHPのゲーム紹介を腐り姫と比べてみると、メーカーの成長度合い(というか金回りのよさ具合?)が良く分かります。

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迫るお姉さん。表情も塗りもGood。

 

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< 静かな曲調のBGM:いつも以上に高品質 >

 私はLiarSoftが音楽集団「雑音工房NOISE」を起用しつづける限り、BGMについては全く心配していないのですが、今回も素晴らしい仕上がりだったと思います。静かな曲が多いところで好みが別れそうですが、私はこういうのが大好き。例によって、クライマックス限定にしてもいいような曲を通常シーンからバンバンかけてきます。当初違和感を覚えたぐらいですが、そのおかげでゲームの世界にググっと引き込まれました。

 特に好きなのはオープニングの「とうかんもり」、「翠の森」に「とがの楔」、さらに「樹里のテェマ」に「たそがれ月」に「夢のきざはし」と......、きりがないですね。メーカーHPでBGMのメドレーをダウンロードできるので、是非確認してみてください。ただあれはあくまで試聴用のショートバージョンだ、と本編プレイ後に思い知ることになりますが。

 ボイスも良かったです。印象としてはフルボイスに近いボリュームの音声が収録されています。サフィズムファン必聴のボイスもあり。

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< ユーザー不在のシステム:未読で止まるスキップは欲しい >

  箱を開けるといきなり修正FDが同梱されていたのでビビりましたが、動作自体は軽快で、サポート外のWin2000環境でも安定動作してくれました。

 ただ、繰り返しプレイが非常につらいシステムになっています。具体的にいうと、

 1. セーブが途中休憩を入れるための 1 個しかできない。
 2. 未読判定スキップがない。

 となります。加えて選択肢そのものや選んだ後の展開の変化が分かりづらいので、結果的にフルコンプまでの難易度が高いゲームになっています。
 これらは全て、製作責任者こだわりのゲーム進行システムに起因しています。なかなか時間の取れない社会人の私には、ここまでの不便を許容できるほど素晴らしいゲーム進行システムだったとは思えませんでした。せめて未読判定スキップを加えるぐらいの妥協はしてほしかったところです。

 それ以外は問題ありません。フォント自体も表示のさせ方も滑らかで美しく(一部のメーカーにはツメの垢を煎じて飲ませたい)、おまけ機能の画面センスの良さもいつもどおりです。「盲点」システムも私は好きです。

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 通常シーンでは、誰がどこにいるかが白黒キャラで表示される。フォントもきれい。

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< 万人向けではないが、質の高さは一級品 >

 インモラルかつホラー、加えてシナリオも難解と、とても万人向けとは言い難いゲームです。しかしCG、音楽、シナリオ、さらには女性陣の魅力といった要素の全ての質が高く、トータルでここまでハイクオリティなゲームというのはなかなか無いのではと思います。発売前のとある雑誌のインタビューで、今後は馬鹿と真面目の二本立てでいく、とメーカーの方が話していましたが、この腐り姫と同程度のクオリティを維持してくれるなら、どちらの路線でも当分発売日買いを続けても問題ないだろうと思っています。次はお馬鹿なゲームの番かな?

 ただ次回作では、いい意味で「ユーザー本位」のゲーム作りをお願いしたいです。シナリオを私好みでわかり易いものに、とはいいませんが、製作責任者のこだわりを優先させるために繰り返しプレイに時間のかかるシステムをユーザーに強要する、というのはやめてもらえないでしょうか。これが同人ゲームなら文句は言わないですけどね。

 (と思っていたら、発売から1ヵ月後に修正ファイルがでて、未読判定スキップが追加されます。ユーザーの声を参考にした仕様の改訂だそうです。ユーザーの意見の反映はメーカーとして素晴らしい姿勢だと思いますが、「仕様の改訂」という表現から察するに、やはり確信犯的に未読判定スキップを付けなかったということなのでしょうか。さらにいわせてもらえば、このゲームに「選択肢まで飛ぶスキップ」はそぐいません。選択肢が多いわけではなくかつ話が複雑なため、よほど記憶力の良いユーザーでない限りストーリーが追いきれなくなります。未読判定してもらってもあまり意味がありません。次回この手の難解なシナリオのゲームを作るときは、Ctrlキーによるスキップ並みの速度を持った、未読判定ありのメッセージスキップでお願いします。)

 

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< 伊勢 きりこ >

 当初樹里ちゃん狙いだった私は、おまえ一人で東京へ帰れ!とヒドイことを思ったものですが、彼女の妙にリアルな独白を聞いた後はほおっておけなくなりました。実際に自分の恋人にするなら彼女がいいですね。だからこそ、あのラストシーンは背筋が凍るものがありました。油断のならないゲームだ、と気を引き締めた記憶があります。湖上のHシーンは美しくて良かったですね。

 ローカルな話で恐縮ですが、月刊うそ増刊号で彼女が微笑みながら杖に仕込んだ飛び道具をぶっ放すラフ絵は最高です。

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 このシチュエーションで燃えない方がおかしい。が、発売日は2月だから感覚的に寒そう。

夏生へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


簸川 夏生 >

 ゲーム中盤まではあくまで樹里狙いだった私には、口うるさい年上キャラにしか思えなかった彼女ですが、役所の資料室イベントから目が離せなくなりました。そしてあのラストシーン、赤い雪となるところを直接見ているせいもありますが、「待ってくれ、消えないでくれ」という思いを一番強く感じたシーンでした。でも彼女自身は満ち足りた気持ちで逝ってしまったわけだから、それはそれで良かったのかなと思ったり。このゲームの真髄を見せてくれました。

 彼女は五樹の毒牙に直接かからなかった数少ない女性ですが、青磁を通して結果的には五樹の影響を受けてしまいました。合掌。

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「でも、よかった。五樹に .........」

芳野へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


< 簸川 芳野 >

 結果的には樹里よりも背徳感が高かったのが彼女です。自慰の場面などは特に。そして簸川家の精神的支柱だった彼女が、蔵女によって狂気に導かれ腐り堕ちていくのを見るのは非常につらかったわけですが、最後の最後になってあの回想シーンを持ってきた演出は素晴らしかったと思います。とてもやるせない気持ちになりました。若き日の彼女もまた美しかった。

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 「もう少しだけ.......こうさせて......いて......」

潤へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


< 簸川 潤 >

  今回のイチオシキャラです。はじめはツッケンどん過ぎて全くノーマークだったのですが、ヘッドホンの独白シーンでも転ぶのに十分なのに、土蔵内での激白シーンとの二段攻撃。これで潤に惚れない人もいないだろうと思います。赤い雪とならないルートもあるなど何となく優遇されていた、と思ったらBADっぽいシーンもあってちょっとショックでしたけど。

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 「どこにでもいる、ふつうの....兄妹になっても.......いいんだろっ.....!?」

樹里へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


< 簸川 樹里(蔵女) >

 私の中では樹里=蔵女=宇宙人となっています。ソフ倫もこれで回避したと。メーカーHPの全裸刑事に出てきた樹里ちゃんに入れ込んでいた私は、本編の樹里の偏執さには思わず引いてしまいました。もうちょっとバランスのいい娘を期待していたのですが、シナリオ上仕方の無いところですね。蔵女の方は終盤の恋愛処女っぽさが良かったです。

 ただ、蔵女と五樹が神のごとき超常能力を持つという設定は、私には合いませんでした。シナリオ全体が「神々のきまぐれな痴話げんかに巻き込まれた人達の悲劇」のように感じてしまうためです。あの二人はギリシャ神話の惚れっぽいゼウスと、嫉妬深いヘラそのもの。他の登場人物達はたまたま運悪く関わり合いになってしまっただけで、それまでの感動的な展開がどうにもシラケてしまうのです。もうちょっとこう、和風でローカルなラストを期待していただけに残念でした。

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そして歴史は繰り返される?

 

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