アトラク=ナクア

 ストーリー概要とキャラの性格付けについて、若干のネタばれがあります。

 

メーカー 発売日 1プレイ時間 やってみて度

Alice Soft

2000年(再販) 3〜5時間 A

 

 もともとは、1997年に他のソフトとセットで発売されたソフトです。
 私は、2000年に単独で再販されたものを購入したのですが......、良かったです。

 蜘蛛の能力を持つ女妖怪が主人公という設定も独特ですが、その主人公に支配された学園で巻き起こる非日常的な出来事が、本当に独特な雰囲気で描かれていました。
 私のボキャブラリーでは、この雰囲気を上手く表現できる言葉が見当たりません。おどろおどろしい、けだるい、閉塞感、うーん違うなあ。もちろん、ウキウキとかルンルンとかいうのとはかけ離れています。
 シナリオ、演出、音楽のどれが効いているのかわかりませんが、私はこの雰囲気がとても好きになりました。

 廉価版のため価格が安い(2000円前後で購入)こともあり、かなりお買い得感が高く、満足できるゲームでした。

< 思わず引き込まれる、重厚なシナリオ >

 本作はノベル形式のアドベンチャーゲームで、全7章のシナリオを進んでいきます。メインのエンディングが1本あり、あとは選択肢によっていくつかの小エンドに分岐していく、という感じです。
 主人公は初音という女の蜘蛛妖怪。彼女は、宿敵である銀(しろがね)との戦いで傷ついた身体を、とある学園に巣を張り癒そうとします。学園の生徒をその毒牙にかけながら。そして宿敵との最終決戦へ....、というのがおおまかなストーリーです。

 傷ついているとは云え、一般人ばかりの学園では敵なしの強力な力を持つ初音。しかし、その力を直接的には使わず、獲物である学生に巧妙な罠を仕掛けて心理的に追い詰め、自らの奴隷にしていきます。お気軽に力を使わないこの展開が、シナリオに厚みを与えていると感じました。
 また、設定が独特なだけにシナリオの展開が読めず、思わず引き込まれてしまいます。宿敵と相対するラストシーンは、選択肢の無い一本道なのですが、見ごたえがありました。

< 非道な主人公と、とても良い性格の獲物たち >

 主人公の初音は、妖怪であり人間を糧としているため、基本的に冷酷非道です。しかし、どことなく魅力的であり、応援したくもなってしまいます。私は一回目のプレイでは、何とか初音に酷いことをさせないようさせないようにと、選択肢を選びました。その方が、結果的に初音を助けることになるんじゃないかと思ったもので.....。

 対して獲物となる学生達は、清らかな心の持ち主ばかり。今時のゲームのキャラによくあるひねくれたところや、ボケたところなど微塵もありません。聖人君子か君らは、と突っ込みたくなるぐらいのカップルも登場します。
 ひねくれ者が好きな私には惹かれるキャラはいないはずだったのですが、ツグミちゃんにはやられました。明るく活発な性格で、同じ学園に通う兄を慕っています。その兄とやりとりするシーンが非常に良い、かわいい。特に、照れながら兄に一緒に帰ろうと誘うシーンなどは、もう最高でした。
 私は年下属性はないのですが、気丈な妹との禁断の愛属性というのはあるのか、と思い知らされたゲームでした(ちなみに私に妹はいません。姉はいます)。

< 音楽がまた素晴らしい >

 約2000円という価格を考えれば、このためだけに購入してもいいんではないか、と思わせるほど音楽は良いと感じました(もちろん、内容の良さとの相乗効果もありますが)。
 最近のゲームの曲と比較すると、飾り気の無い曲が多いですが、ゲームの雰囲気に合ったきれいなメロディがとても気に入りました。
 私が最も好きなのは、ゲーム全体の雰囲気作りに一役かっている「Red tint」です。「Running Clouds」なども良かったですね。

< 価格を考慮すれば、お勧め度トップクラス >

 全体的に多少古臭さを感じさせますし、CG枚数も60枚程度、立ち絵のバリエーションが少ないなど、現在普通に一本のソフトとして売るには苦しいと思いますが、廉価版であれば問題なし、というかかなりお買い得だと思います。
 ホラーものに特に抵抗の無い方であれば、是非やってみてほしい一本です。
 数年後に廉価版を出すというシステムも、私はよいと思うんです。お気に入りのメーカーには、過去の名作を廉価版で出すことで、新たなファンを増やしていってほしいですね。

 

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